「注文の多い料理店」
作:宮沢賢治
二人の若い紳士が、すつかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴか/\する鉄砲をかついで、白熊のやうな犬を二疋つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさ/\したとこを、こんなことを云ひながら、あるいてをりました。
「ぜんたい、こゝらの山は怪しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構はないから、早くタンタアーンと、やつて見たいもんだなあ。」
(略)
簔帽子をかぶつた専門の猟師が、草をざわざわ分けてやつてきました。
そこで二人はやつと安心しました。
そして猟師のもつてきた団子をたべ、途中で十円だけ山鳥を買つて東京に帰りました。
しかし、さつき一ぺん紙くづのやうになつた二人の顔だけは、東京に帰つても、お湯にはひつても、もうもとのとほりになほりませんでした。
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