蟹工船
小林多喜二
「おい地獄さ行ぐんだで!」
二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、
海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。―漁夫は指元まで吸いつくした煙草
を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高
い船腹をすれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒臭かった。
(略)
「本当のことを云えば、そんな先きの成算なんて、どうでもいいんだ。―死ぬ
か、生きるか、だからな」
「ん、もう一回だ!」
そして、彼等は、立ち上った。―もう一度!
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