#さるのこしかけ #宮沢賢治【日本の名作文学】

「さるのこしかけ」
作:宮沢賢治

 楢夫は夕方、裏の大きな栗の木の下に行きました。その幹の、丁度楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。
 楢夫は、じっとそれを眺めて、ひとりごとを言いました。
「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰をかけるようなやつなら、すいぶん小さな猿だ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない。いくら小猿の大将が威張ったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ。どんな顔をしているか、一ぺん見てやりたいもんだ。」

(略)

 楢夫はもう覚悟をきめて、向うの川を、もう一ぺん見ました。その辺に楢夫の家があるのです。そして楢夫は、もう下に落ちかかりました。
 その時、下で、「危いっ。何をする」という大きな声がしました。見ると、茶色のばさばさの髪の巨きな赤い顔が、こっちを見あげて、手を延ばしているのです。
「ああ山男だ。助かった。」と楢夫は思いました。そして、楢夫は、忽ち山男の手で受け留められて、草原におろされました。その草原は楢夫のうちの前の草原でした。栗の木があって、たしかに三つの猿のこしかけがついていました。そして誰も居ません。もう夜です。
「楢夫。ごはんです。楢夫。」とうちの中でお母さんが叫んでいます。

 

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