#たけくらべ #樋口一葉 【日本の名作文学】

「たけくらべ」

作:樋口一葉
廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火うつる三階の騷ぎも
手に取る如く、明けくれなしの車の行來にはかり知られぬ全盛をうらなひて、
大音寺前と名は佛くさけれど、さりとは陽氣の町と住みたる人の申き、三嶋
神社の角をまがりてより是れぞと見ゆる大厦もなく、かたぶく軒端の十軒長
屋二十軒長や、商ひはかつふつ利かぬ處とて半さしたる雨戸の外に、あやし
き形に紙を切りなして、胡粉ぬりくり彩色のある田樂みるやう、裏にはりた
る串のさまもをかし・・・
(略)
龍華寺の信如が我が宗の修業の庭に立出る風説をも美登利は絶えて聞かざり
き、有し意地をば其まゝに封じ込めて、此處しばらくの怪しの現象に我れを
我れとも思はれず、唯何事も恥かしうのみ有けるに、或る霜の朝水仙の作り
花を格子門の外よりさし入れ置きし者の有けり、誰れの仕業と知るよし無け
れど、美登利は何ゆゑとなく懷かしき思ひにて違ひ棚の一輪ざしに入れて淋
しく清き姿をめでけるが、聞くともなしに傳へ聞く其明けの日は信如が何が
しの學林に袖の色かへぬべき當日なりしとぞ。
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作者説明 ) ウィキペディア

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