地方分権推進法

平成7年5月19日 法律第96号
平成7年7月3日 施行(附則第一項)
平成12年7月3日 失効(附則第三項)

第十三条第四項の「錮」には、「こ」と振り仮名が振られている。

第一章 総則


(目的)
第一条
 この法律は、国民がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現することの緊要性にかんがみ、地方分権の推進について、基本理念並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、地方分権の推進に関する施策の基本となる事項を定め、並びに必要な体制を整備することにより、地方分権を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

(地方分権の推進に関する基本理念)
第二条
 地方分権の推進は、国と地方公共団体とが共通の目的である国民福祉の増進に向かって相互に協力する関係にあることを踏まえつつ、各般の行政を展開する上で国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性及び自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ることを基本として行われるものとする。

(国及び地方公共団体の責務)
第三条
 国は、前条に定める地方分権の推進に関する基本理念にのっとり、地方分権の推進に関する施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有する。
 地方公共団体は、国の地方分権の推進に関する施策の推進に呼応し、及び並行して、その行政運営の改善及び充実に係る施策を推進する責務を有する。
 国及び地方公共団体は、地方分権の推進に伴い、国及び地方公共団体を通じた行政の簡素化及び効率化を推進する責務を有する。


第二章 地方分権の推進に関する基本方針


(国と地方公共団体との役割分担)
第四条
 地方分権の推進は、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、地方公共団体においては住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体において処理するとの観点から地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うべきことを旨として、行われるものとする。

(地方分権の推進に関する国の施策)
第五条
 国は、前条に定める国と地方公共団体との役割分担の在り方に即して、地方公共団体への権限の委譲を推進するとともに、地方公共団体に関する国の関与(地方公共団体又はその機関の事務の処理又は管理及び執行に関し、国の行政機関が、地方公共団体又はその機関に対し、許可、認可等の処分、届出の受理その他これらに類する一定の行為を行なうことをいう。)、必置規定(国が、地方公共団体に対し、地方公共団体の行政機関若しくは施設、特別の資格若しくは職名を有する職員又は附属機関を設置しなければならないものとすることをいう。)、地方公共団体の執行機関が国の機関として行なう事務及び地方公共団体に対する国の負担金、補助金等の支出金の地方自治の確立を図る観点からの整理及び合理化その他所要の措置を講ずるものとする。

(地方税財源の充実確保)
第六条
 国は、地方公共団体が事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図るものとする。

(地方公共団体の行政体制の整備及び確立)
第七条
 地方公共団体は、行政及び財政の改革を推進するとともに、行政の公正の確保と透明性の向上及び住民参加の充実のための措置その他の必要な措置を講ずることにより、地方分権の推進に応じた地方公共団体の行政体制の整備及び確立を図るものとする。
 国は、前項の地方公共団体の行政体制の整備及び確立に資するため、地方公共団体に対し必要な支援を行うものとする。


第三条 地方分権推進計画


(地方分権推進計画)
第八条
 政府は、地方分権の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、前章に定める地方分権の推進に関する基本方針に即し、講ずべき必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を定めた地方分権推進計画を作成しなければならない。
 内閣総理大臣は、地方分権推進計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
 政府は、地方分権推進計画を作成したときは、これを国会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならない。


第四章 地方分権推進委員会


(設置)
第九条
 総理府に、地方分権推進委員会(以下「委員会」という。)を置く。

(所掌事務)
第十条
 委員会は、この法律に定める地方分権の推進に関する基本的事項について調査審議し、その結果に基づいて、第八条に定める地方分権推進計画の作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告する。
 委員会は、地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視し、その結果に基づき内閣総理大臣に必要な意見を述べる。

第十一条
 内閣総理大臣は、前条の勧告又は意見を受けたときは、これを尊重しなければならない。
 内閣総理大臣は前条第一項の勧告を受けたときは、これを国会に報告するものとする。

(組織)
第十二条
 委員会は、委員七人をもって組織する。

(委員)
第十三条
 委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
 前項の場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める者のうちから、委員を任命することができる。
 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。
 内閣総理大臣は、委員が禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受け、又は禁錮(こ)以上の刑に処せられたときは、その委員を罷免しなければならない。
 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、その委員を罷免することができる。
 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
 委員は、非常勤とする。

(委員長)
第十四条
 委員会に委員長を置き、委員の互選によりこれを定める。
 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
 委員長に事故あるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

(資料の提出その他の協力等)
第十五条
 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、行政機関及び地方公共団体の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
 委員会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、行政機関及び地方公共団体の業務の運営状況を調査し、又は委員にこれを調査させることができる。
 委員会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、第一項に規定する者以外の者に対しても。必要な協力を依頼することができる。

(事務局)
第十六条
 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。
 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。

(政令への委任)
第十七条
 この政令に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。


附則(抄)

(施行期日)
 この法律は、公布の日から起算して四月を超えない範囲内において政令で定める日(平成7年7月3日−平成7年政令279)から施行する。ただし、第十三条第一項中両議院の同意を得ることに関する部分は、公布の日から施行する。

(この法律の失効)
 この法律は、附則第一項の政令で定める日から起算して五年を経過した日(平成12年7月3日)にその効力を失う。


附属法令
地方分権推進委員会令
平成7年6月30日 政令280
平成7年7月3日 施行

入力者:河原一敏