月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約

Treaty on principles governning the activities and states in the exploration and use of outer space, including moon and other celestial bodies
(宇宙条約)
1966年12月19日 国連総会にて採択
1967年1月27日より ワシントン、ロンドン、モスクワにて署名開放
1967年10月10日 効力発生

1967年7月19日 国会承認
1967年10月6日 内閣批准
1967年10月6日 批准書認証
1967年10月10日 批准書寄託、発効

1967年10月11日 条約第19号


 この条約の当事国は、
 人間の宇宙空間への進入の結果、人類の前に展開する広大な将来性に鼓舞され、
 平和的目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益であることを認識し、
 宇宙空間の探査及び利用がすべての人類のために、その経済的又は科学的発展の程度にかかわりなく行われなければならないことを信じ、
 平和的目的のための宇宙空間の探査及び利用の科学面及び法律面における広範な国際協力に貢献することを希望し、
 この国際協力が諸国家間及び人民間の相互理解の増進及び友好関係の強化に貢献することを信じ、
 千九百六十三年十二月十三日に国際連合総会が全会一致で採択した決議第千九百六十二号(第十八回会期)「宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する法的原則に関する宣言」を想起し、
 核兵器若しくは他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せること又はこれらの兵器を天体に設置することを慎むように諸国に要請する千九百六十三年十月十七日の国際連合総会の全会一致の採択による決議第千八百八十四号(第十八回会期)を想起し、
 平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為を誘発し若しくは助長することを意図し、又はこれらを誘発し若しくは助長するおそれのある宣伝を非難する千九百四十七年十一月三日の国連総会決議議決第百十号(第二回会期)を考慮し、かつ、この決議が宇宙空間に適用されることを考慮し、
 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約が国際連合憲章の目的及び原則を助長するものであることを確信して、
 次のとおり協定した。

第一条【基本原則】
 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用は、すべての国の利益のために、その経済的又は科学的発展の程度にかかわりなく行われるものであり、全人類に認められる活動分野である。
 月その他の天体を含む宇宙空間は、すべての国がいかなる種類の差別もなく、平等の基礎に立ち、かつ、国際法に従つて、自由に探査し及び利用ができるものとし、また、天体のすべての地域への立入りは、自由である。
 月その他の天体を含む宇宙空間における科学的調査は、自由であり、また、諸国は、この調査における国際協力を容易にし、かつ、奨励するものとする。

第二条【領有の禁止】
 月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によつても国家による取得の対象とはならない。

第三条【国際法の遵守】
 条約の当事国は、国際連合憲章を含む国際法に従つて、国際の平和及び安全の維持並びに国際間の協力及び理解の促進のために、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における活動を行わなければならない。

第四条【軍事的利用の禁止】
 条約の当事国は、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと並びに他のいかなる方法によつてもこれらの兵器を宇宙空間に配置しないことを約束する。
 月その他の天体は、もつぱら平和的利用のために、条約のすべての当事国によつて利用されるものとする。天体上においては、軍事基地、軍事使節及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は、禁止する。科学的研究その他の平和的目的のために軍の要員を使用することは、禁止しない。月その他の天体の平和的探査のために必要なすべての装置又は施設を使用することも、また、禁止しない。

第五条【宇宙飛行士に対する援助】
 条約の当事国は、宇宙飛行士を宇宙空間への人類の使節とみなし、事故、遭難又は他の当事国の領域若しくは公海における緊急着陸の場合には、その宇宙飛行士にすべての可能な援助を与えるものとする。宇宙飛行士は、そのような着陸を行つたときは、その宇宙飛行機の登録国へ安全かつ迅速に送還されるものとする。
 いずれかの当事国の宇宙飛行士は、宇宙空間及び天体上において活動を行うときは、他の当事国の宇宙飛行士にすべての可能な援助を与えるものとする。
 条約の当事国は、宇宙飛行士の生命又は健康に危険となるおそれのある現象を月その他の天体を含む宇宙空間に発見したときは、直ちに、これを条約の他の当事国又は国際連合事務総長に通報するものとする。

第六条【国家の責任】
 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動について、それが政府機関によつて行われるか非政府団体によつて行われるかを問わず、国際的責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従つて行われることを確保する国際的責任を有する。月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。国際機関が月その他の天体を含む宇宙空間において活動を行う場合には、その国際機関及びこれに参加する条約の当事国の双方がこの条約を遵守する責任を有する。

第七条【国の賠償責任】
 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間に物体を発射し若しくは発射させる場合又はその領域若しくは施設から物体が発射される場合には、その物体又はその構成部分が地球上、大気空間又は月その他の天体を含む宇宙空間において条約の他の当事国又はその自然人若しくは法人に与える損害について国際的に責任を有する。

第八条【物体及び乗員に対する管轄権と管理権】
 宇宙空間に発射された物体が登録されている条約の当事国は、その物体及びその乗員に対し、それらが宇宙空間又は天体にある間、管轄権及び管理の権限を保持する。宇宙空間に発射された物体(天体上に着陸させられ又は建造された物体を含む。)及びその構成部分の所有権は、それらが宇宙空間若しくは天体上にあること又は地球に帰還することによつて影響を受けない。これらの物体又は構成部分で、物体が登録されている条約の当事国の領域外で発見されたときは、その当事国に返還されるものとする。その当事国は、要請されたときは、それらの物体又は構成部分の返還に先だち、識別のための資料を提供するものとする。

第九条【宇宙活動の協力】
 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用において、協力及び相互援助の原則に従うものとし、かつ、条約の他のすべての当事国の対応する利益に妥当な配慮を払つて、月その他の天体を含む宇宙空間におけるすべての活動を行うものとする。条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間の有害な汚染及び地球外物質の導入から生ずる地球の環境の悪化を避けるように月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び研究を実施し、かつ、必要な場合には、このための適当な措置を執るものとする。条約の当事国は、自国又は自国民によつて計画された月その他の天体を含む宇宙空間における活動又は実験が月その他の天体を含む宇宙空間の平和的な探査及び利用における他の当事国の活動に潜在的に有害な干渉を及ぼすおそれがあると信ずる理由があるときは、その活動又は実験が行われる前に、適当な国際的協議を行うものとする。条約の当事国は、他の当事国が計画した月その他の天体を含む宇宙空間における活動又は実験が月その他の天体を含む宇宙空間の平和的な探査及び利用における活動に潜在的に有害な干渉を及ぼすおそれがあると信ずる理由があるときは、その活動又は実験に関する協議を要請することができる。

第十条【飛行観測の機会】
 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国際協力をこの条約の目的に従つて促進するために、条約の他の当事国が打ち上げる宇宙物体の飛行を観測する機会が与えられることについての当該他の当事国の要請に対し、平等の原則に基づいて考慮を払うものとする。
 その観測の機会の性質及びその機会が与えられる条件は、関係国間の合意により決定されるものとする。

第十一条【宇宙活動の情報提供】
 月その他の天体を含む宇宙空間における活動を行う条約の当事国は、宇宙空間の平和的な探査及び利用における国際協力を促進するために、その活動の性質、実施状況、場所及び結果について、国際連合事務総長並びに公衆及び国際科学界に対し、実行可能な最大限度まで情報を提供することに合意する。国際連合事務総長は、この情報を受けたときは、それが迅速かつ効果的に公表されるようにするものとする。

第十二条【宇宙基地などの開放】
 月その他の天体上のすべての基地、施設、装置及び宇宙飛行機は、相互主義に基づいて、条約の他の当事国の代表者に開放される。これらの代表者は、適当な協議が行われるため及び訪問する施設等における安全を確保し、かつ、そこでの正常な作業に対する干渉を避けるように最大限の予防措置が執られるために、計画された訪問につき合理的な予告を行うものとする。

第十三条【条約の対象となる宇宙活動】
 この条約の規定は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における条約の当事国の活動に適用するものとし、これらの活動が条約の一当事国により行われる場合であるか共同で行われる場合(政府間国際機関の枠(「わく」と振り仮名)内で行われる場合を含む。)であるかを問わない。
 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における政府間国際機関が行う活動に関連して生ずる実際的問題は、条約の当事国が、当該国際機関又はその加盟国でこの公約の当事国である一若しくは二以上の国と共同して解決するものとする。

第十四条【署名・批准・加入・効力発生】
 この条約は、署名のためすべての国に開放される。この条約がの規定に従つて効力を生ずる前にこの条約に署名しない国は、いつでもこの条約に加入することができる。
 この条約は、署名国により批准されなければならない。批准書及び加入書は、寄託国政府として指定されたアメリカ合衆国、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の政府に寄託するものとする。
 この条約は、この条約により寄託国政府として指定された政府を含む五の政府が批准書を寄託したときに効力を生ずる。
 この条約の効力発生後に批准書又は加入書を寄託する国については、この条約は、その批准書又は加入書の寄託の日に効力を生ずる。
 寄託国政府は、すべての署名国及び加入国に対し、署名の日、この条約の批准書及び加入書の寄託の日、この条約の効力発生の日その他について、すみやかに通報するものとする。
 この条約は、寄託国政府が国際連合憲章第百二条の規定に従つて登録するものとする。

第十五条【脱退】
 条約のいずれの当事国も、この条約の効力発生の後一年を経過したときは、寄託国政府にあてた通告書により、条約からの脱退を通告することができる。その脱退は、通告諸の受領の日から一年で効力を生ずる。

第十七条【正文】
 この条約は、英語、ロシア語、フランス語、スペイン語及び中国語による本文をひとしく正文とし、寄託国政府に寄託するものとする。この条約の認証謄本は、寄託国政府が署名国及び加入国の政府に送付するものとする。


 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受け、この条約に署名した。
(全権委員署名省略)

入力者:河原一敏