日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定
(日韓漁業協定)
昭和40(1965)年12月18日 条約第26号
昭和40(1965)年12月18日 施行
- 日本国及び大韓民国は、
- 両国が共通の関心を有する水域における漁業資源の最大の持続的生産性が維持されるべきことを希望し、
- 前記の資源の保存及びその合理的開発と発展を図ることが両国の利益に役立つことを確信し、
- 公海自由の原則がこの協定に特別の規定がある場合を除くほかは尊重されるべきことを確認し、
- 両国の地理的近接性と両国の漁業の交錯から生じることのある紛争の原因を除去することが望ましいことを認め、
- 両国の漁業の発展のために相互に協力することを希望して、
- 次のとおり協定した。
- 第一条
- 1
- 両締約国は、それぞれの締約国が自国の沿岸の基線から測定して十二海里までの水域を自国が漁業に関して排他的管轄権を行使する水域(以下「漁業に関する水域」という。)として設定する権利を有することを相互に認める。ただし、一方の締約国がこの漁業に関する水域の設定に際し直線基線を使用する場合には、その直線基線は、他方の締約国と協議の上決定するものとする。
- 2
- 両締約国は、一方の締約国が自国の漁業に関する水域において他方の締約国の漁船が漁業に従事することを排除することについて、相互に異議を申し立てない。
- 3
- 両締約国の漁業に関する水域が重複する部分については、その部分の最大の幅を示す直線を二等分する点とその重複する部分が終わる二点とをそれぞれ結ぶ直線により二分する。
- 第二条
- 両締約国は、次の各線により囲まれる水域(領海及び大韓民国の漁業に関する水域を除く。)を共同規制水域として設定する。
- (a)
- 北緯三十七度以北の東経百二十四度の経線
- (b)
- 次の各点を順次に結ぶ線
- (i)
- 北緯三十七度三十分と東経百二十四度との交点
- (ii)
- 北緯三十六度四十五分と東経百二十四度三十分との交点
- (iii)
- 北緯三十三度三十分と東経百二十四度三十分との交点
- (iv)
- 北緯三十二度三十分と東経百二十六度との交点
- (v)
- 北緯三十二度三十分と東経百二十七度との交点
- (vi)
- 北緯三十四度三十四分三十秒と東経百二十九度二分五十秒との交点
- (vii)
- 北緯三十四度四十四分十秒と東経百二十九度八分との交点
- (viii)
- 北緯三十四度五十分と東経百二十九度十四分との交点
- (ix)
- 北緯三十五度三十分と東経百三十度との交点
- (x)
- 北緯百三十七度三十分と東経百三十一度十分との交点
- (xi)
- 牛岩嶺高頂
- 第三条
- 両締約国は、共同規制水域においては、漁業資源の最大の持続的生産性を確保するために必要とされる保存措置が十分な科学的調査に基づいて実施されるまでの間、底びき網漁業、まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業について、この協定の不可分の一部をなす附属書に掲げる暫定的漁業規制措置を実施する。(トンとは、総トン数によるものとし、船内居住区改善のための許容トン数を差し引いたトン数により表示する。)
- 第四条
- 1
- 漁業に関する水域の外側における取締り(停船及び臨検を含む。)及び裁判管轄権は、漁船の所属する締約国のみが行ない、及び行使する。
- 2
- いずれの締約国も、その国民及び漁船が暫定的漁業規制措置を誠実に遵守することを確保するため適切な指導及び監督を行ない、違反に対する適当な罰則を含む国内措置を実施する。
- 第五条
- 共同規制水域の外側に共同資源調査水域が設定される。その水域の範囲及びその水域で行なわれる調査については、第六条に定める漁業共同委員会が行なうべき勧告に基づき、両締約国間の協議の上決定される。
- 第六条
- 1
- 両締約国は、この協定の目的を達成するために、日韓漁業共同委員会(以下「委員会」という。)を設置し、及び維持する。
- 2
- 委員会は、二の国別委員部で構成し、各国別委員部は、それぞれの締約国の政府が任命する三人の委員で構成する。
- 3
- 委員会のすべての決議、勧告その他の決定は、国別委員部の間の合意によつてのみ行なうものとする。
- 4
- 委員会は、その会議の運営に関する規則を決定し、必要があるときは、これを修正することができる。
- 5
- 委員会は、毎年少なくとも一回は会合し、また、そのほかに一方の国別委員部の要請により会合することができる。第一回会議の期日及び場所は、両締約国の間の合意で決定する。
- 6
- 委員会は、その第一回会議において、議長及び副議長を異なる国別委員部から選出する。議長及び副議長の任期は、一年とする。国別委員部からの議長及び副議長の選定は、隔年においてそれぞれの締約国がそれらの地位に順番に代表されるように行うものとする。
- 7
- 委員会の下に、その事務を遂行するための常設の事務局が設置される。
- 8
- 委員会の公用語は、日本語及び韓国語とする。提案及び資料は、いずれの公用語によつても提出することができ、また、必要に応じ、英語によつても提出することができる。
- 9
- 委員会がその共同の経費を認めたときは、委員会が勧告し、かつ、両締約国が承認する形式及び割合において両締約国が負担する分担金により、委員会が支払うものとする。
- 10
- 委員会は、その共同の経費のための資金の支出を委任することができる。
- 第七条
- 1
- 委員会は、次の任務を遂行する。
- (a)
- 両締約国が共通の関心を有する水域における漁業資源の研究のため行なう科学的調査について、並びにその調査及び研究の結果に基づき執られるべき共同規制水域内における規制措置について両締約国に勧告する。
- (b)
- 共同資源調査水域の範囲について両締約国に勧告する。
- (c)
- 必要に応じ、暫定的漁業規制措置に関する事項につき検討し、及びその結果に基づき執られるべき措置について両締約国に勧告する。
- (d)
- 両締約国の漁船間の操業の安全及び秩序に関する必要な事項並びに海上における両締約国の漁船間の事故に対する一般的な取扱方針につき検討し、並びにその結果に基づき執られるべき措置について両締約国に勧告する。
- (e)
- 委員会の要請に基づいて両締約国が提出すべき資料、統計及び記録を編集し、及び研究する。
- (f)
- この協定の違反に関する同等の刑の細目の制定について審議し、及び両締約国に勧告する。
- (g)
- 毎年委員会の事業報告を両締約国に提出する。
- (h)
- そのほか、この協定の実施に伴う技術的な諸問題につき検討し、必要と認めるときは、執られるべき措置について両締約国に勧告する。
- 2
- 委員会は、その任務を遂行するため、必要に応じ、専門家をもつて構成される下部機構を設置することができる。
- 3
- 両締約国政府は、1の規定に基づき行なわれた委員会の勧告をできる限り尊重するものとする。
- 第八条
- 1
- 両締約国は、それぞれ自国の国民及び漁船に対し、航行に関する国際慣行を遵守させるため、両締約国の漁船間の操業の安全を図り、かつ、その正常な秩序を維持するために、及び海上における両締約国の漁船間の事故の円滑かつ迅速な解決を図るために適切と認める措置を執るものとする。
- 2
- 1に掲げる目的のため、両締約国の関係当局は、できる限り相互に密接に連絡し、協力するものとする。
- 第九条
- 1
- この協定の解釈及び実施に関する両締約国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
- 2
- 1の規定によい解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員から当該期間の後三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人からなる仲裁委員会に決定のための付託をするものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれの国民であつてはならない。
- 3
- いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。
- 4
- 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。
- 第十条
- 1
- この協定は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。
- 2
- この協定は、五年間効力を有し、その後は、いずれか一方の締約国が他方の締約国にこの協定を終了させる意思を通告する日から一年間効力を存続する。
- 以上の証拠として、下名は、各自の政府からこのために正当な委任を受け、この協定に署名した。
- 千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。
- (署名略)
- この協定の第三条に定める暫定的漁業規制措置は、両締約国のそれぞれに適用されるものとし、その内容は、次のとおりとする。
- (以下省略)
附属及び関係法令
- 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録
- 昭和40年12月18日 外務省告示254
- 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律
- 昭和40年12月17日 法律145
昭和40年12月18日 施行
- 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定第一条1の漁業に関する水域等において大韓民国国民の行なう漁業の禁止に関する省令
- 昭和40年12月17日 農林省令58
昭和40年12月18日 施行
- 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定第一条1の漁業に関する水域等におけるさばつり漁業及び沿岸漁業等の取締りに関する省令
- 昭和40年12月17日 農林省令60
昭和40年12月18日 施行
入力者:河原一敏