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交通事件即決裁判手続法

昭和29(1954)年5月18日 法律第113号
昭和29(1954)年11月1日 施行(昭和29年政令274)
最終改正 平成3年4月17日 法律31

(この法律の趣旨)
第一条
 この法律は、交通に関する刑事事件の迅速適正な処理を図るため、その即決裁判に関する手続を定めるものとする。

(定義)
第二条
 この法律において「交通に関する刑事事件」とは、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第八章の罪にあたる事件をいう。

(即決裁判)
第三条
 簡易裁判所は、交通に関する刑事事件について、検察官の請求により、公判前、即決裁判で、五十万円以下の罰金又は過料を科することができる。この場合には、刑の執行を猶予し、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。
 即決裁判は、即決裁判手続によることについて、被告人に異議があるときは、することができない。

(即決裁判の請求)
第四条
 即決裁判の請求は、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)による公訴の提起と同時に、書面でしなければならない。
 検察官は、即決裁判の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、即決裁判手続を理解させるために必要な事項を説明し、刑事訴訟法の定める手続に従い裁判を受けることができる旨を告げた上、即決裁判手続によるけについて異議がないかどうかを確かめなければならない。

(書類等の提出)
第五条
 検察官は、即決裁判の請求と同時に、即決裁判をするために必要があると思科する書類及び証拠物を裁判所に差し出さなければならない。

(通常の審判)
第六条
 裁判所は、即決裁判の請求があつた場合において、その事件が即決裁判をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思科するときは、刑事訴訟法の定める通常の規定に従い、審判しなければならない。
 裁判所は、前項の規程により通常の規定により審判をするときは、直ちに、検察官にその旨を通知しなければならない。
 第一項の場合には、刑事訴訟法第二百七十一条及び第二百七十二条の規定の適用があるものとする。但し、同法第二百七十一条第二項に定める期間は、前項の通知のあつた日から二箇月とする。

(審判)
第七条
 即決裁判の請求があつたときは、裁判所は、前条第一項の場合を除き、即日期日を開いて審判するものとする。

(開廷)
第八条
 即決裁判期日における取調及び裁判の宣告は、公開の法廷で行う。
 法廷は、裁判官及び裁判所書記官が列席して開く。
 検察官は、法廷に出席することができる。

(被告人及び弁護人の出頭)
第九条
 被告人が期日に出頭しないときは、開廷することができない。
 被告人が法人であるときは、代理人を出頭させることができる。
 弁護人には、期日に出頭することができる。

(期日における取調)
第十条
 期日においては、裁判長は、まず、被告人に対し、被告事件の要旨及び自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない。
 前項の手続が終つた後、裁判長は、被告人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。
 裁判所は、必要と認めるときは、適当と認める方法により被告人又は参考人の陳述を聴き、書類及び証拠物を取調べ、その他の事実の徴取の取調をすることができる。
 検察官及び弁護人は意見を述べることができる。

(証拠)
第十一条
 即決裁判手続においては、被告人の憲法上の権利を侵さない限り、検察官が差し出した書類及び証拠物並びに期日において取調をしたすべての資料に基いて、裁判をすることができる。

(裁判の宣告)
第十二条
 即決裁判の宣告をする場合には、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑及び附随の処分並びに宣告があつた日から十四日以内に刑事訴訟法の定める通常の規定による審判(以下「正式裁判」という。)の請求ができる旨を告げなければならない。
 即決裁判の宣告をしたときは、その内容を記録に明らかにしておかなければならない。

(正式裁判の請求)
第十三条
 即決裁判の宣告があつたときは、被告人又は検察官は、その宣告があつた日から十四日以内に、正式裁判の請求をすることができる。
 正式裁判の請求は、即決裁判をした裁判所に、書面でしなければならない。
 正式裁判び請求があつたときは、裁判所は、すみやかに、その旨を検察官又は被告人に通知しなければならない。
 刑事訴訟法第四百六十六条から第四百六十八条までの規定は、正式裁判の請求又はその取下について準用する。この場合において、同法第四百六十八条第三項中「略式命令」とあるには、「即決裁判」と読み替えるものとする。

(即決裁判の効力)
第十四条
 即決裁判は、正式裁判の請求による判決があつたときは、その効力を失う。
 即決裁判は、正式裁判の請求期間の経過又はその請求の取下により、確定判決と同一の効力を生ずる。正式裁判の請求を棄却する裁判が確定したときも、同様である。

(仮納付)
第十五条
 裁判所は、即決裁判の宣告をする場合において相当と認めるときは、附随の処分として、被告人に対し、仮に罰金又は科料に相当する金額を納付すべきことを命ずることができる。
 前項の仮納付の裁判は、直ちに執行することができる、但し、正式裁判の請求があつたときは、この限りでない。
 刑事訴訟法第四百九十三条及び第四百九十四条の規定は、第一項の仮納付の裁判の執行について準用する、この場合において、同法第四百三十九条中「第一審」とあるのは「即決裁判手続」と、「第二審」とあるのは「第一審又は第二審」と読み替えるものとする。

(裁判官の除斥)
第十六条
 裁判官は、事件について前に即決裁判をしたときは、職務の執行から除斥される。

(刑事訴訟法との関係)
第十七条
 交通に関する事件の即決裁判手続については、この法律に特別の規定があるものの外、その性質に反しない限り、刑事訴訟法による。

附則(抄)

 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない範囲内で、政令で定める(昭和29年11月1日−昭和29年政令274)。

附則(昭和35年6月25日法律105)(抄)

(施行期日)
第一条
 この法律(以下「新法」という。)は、公布の日からきさんして六月をこえない範囲内において政令で定める日(昭和35年12月20日−昭和35年政令269)から施行する。

(交通事件即決裁判手続法の一部改正等)
第十五条
 旧法又はこれに基づく命令に違反する事件の即決裁判に関する手続については、なお従前の例による。


附属法令
交通事件即決裁判手続規則
昭和29年9月15日 最高裁判所規則14
昭和29年11月1日 施行
道路交通法の施行に伴う交通事件の即決裁判に関する手続の経過措置に関する規則
昭和35年11月21日 最高裁判所15
昭和35年12月20日 施行

関係法令
道路交通法
昭和35年6月15日 法律105
昭和35年12月20日 施行

入力者:河原一敏