有線電気通信法

昭和28年7月31日 法律第96号
昭和28年8月1日 施行
最終改正 平成5年法律89

(目的)
第一条
 この法律は、有線電気通信設備の設置及び使用を規律し、有線電気通信に関する秩序を確立することによつて、公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条
 この法律において「有線電気通信」とは、送信の場所と受信の場所との間の線条その他の導体を利用して、電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。
 この法律において「有線電気通信設備」とは、有線電気通信を行うための機械、器具、線路その他の電気的設備(無線通信用の有線連絡線を含む。)をいう。

(有線電気通信設備の届出)
第三条
 有線電気通信設備を設置しようとする者は、次の事項を記載した書類を添えて、設置の工事の開始の日の二週間前まで(工事を要しないときは、設置の日から二週間以内)に、その旨を郵政大臣に届け出なければならない。
 有線電気通信の方式の別
 設備の設置の場所
 設備の概要
 前項の届出をする者は、その届出に係る有線電気通信設備が次に掲げる設備(郵政省令で定めるものを除く。)に該当するものであるときは、同項各号の事項のほか、その使用の態様その他郵政省令で定める事項を併せて届け出なければならない。
 二人以上の者が共同して設置するもの
 他人(第一種電気通信事業者(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第十二条第一項に規定する第一種電気通信事業者をいう。以下同じ。)を除く。)の設置した有線電気通信設備と相互に接続されるもの
 他人の通信の用に供されるもの
 有線電気通信設備を設置した者は、第一項各号の事項若しくは前項の届出に係る事項を変更しようとするとき、又は同項に規定する設備に該当しない設備をこれに該当するものに変更しようとするときは、変更の工事の開始の日の二週間前まで(工事を要しないときは、設置の日から二週間以内)に、その旨を郵政大臣に届け出なければならない。
 前三項の規定は、次の有線電気通信設備については、適用しない。
 第一種電気通信事業者が設置するもの
 設備の一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(これに準ずる区域内を含む。以下同じ。)又は同一の建物内であるもの(第二項に掲げるもの(同項の郵政省令で定めるものを除く。)を除く。)
 警察事務、消防事務、水防事務、航空保安事務、海上保安事務、気象業務、鉄道事業、軌道事業、電気事業、鉱業その他政令で定める業務を行う者が設置するもの第二項に掲げるもの(同項の郵政省令で定めるものを除く。)を除く。)
 前三号に掲げるもののほか、郵政省令で定めるもの

(本邦外にわたる有線電気通信設備)
第四条
 本邦内の場所と本邦外の場所との間の有線電気通信設備は、第一種電気通信事業者がその事業の用に供する設備として設置する場合を除き、設置してはならない。ただし、特別の事由がある場合において、郵政大臣の許可を受けたときは、この限りでない。

(技術基準)
第五条
 有線電気通信設備(政令で定めるものを除く。)は、政令で定める技術基準に適合するものでなければならない。
 前項の技術基準は、これにより次の事項が確保されるものとして定められなければならない。
 有線電気通信設備は、他人の設置する有線電気通信設備に妨害を与えないようにすること。
 有線電気通信設備は、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること。

(設備の検査等)
第六条
 郵政大臣は、この法律の施行に必要な限度において、有線電気通信設備を設置した者からその設備に関する報告を徴収し、又はその職員に、その事務所、営業所、工場若しくは事業場に立ち入り、その設備若しくは帳簿書類を検査させることができる。
 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(設備の改善等の措置)
第七条
 郵政大臣は、有線電気通信設備を設置した者に対し、その設備が第五条の技術基準に適合しないため他人の設置する有線電気通信設備に妨害を与え、又は人体に危害を及ぼし、若しくは物件に損傷を与えると認めるときは、その妨害、危害又は損傷の防止又は除去のため必要な限度において、その設備の使用の停止又は改造、修理その他の措置を命ずることができる。
 郵政大臣は、第三条第二項に規定する有線電気通信設備(同項の郵政省令で定めるものを除く。)を設置した者に対しては、前項の規定によるほか、その設備につき通信の秘密の確保に支障があると認めるとき、その他その設備の運用が適切でないため他人の利益を阻害すると認めるときは、その支障の除去その他当該他人の利益の確保のために必要な限度において、その設備の改善その他の措置をとるべきことを勧告することができる。

(非常事態における通信の確保)
第八条
 郵政大臣は、天災、事変その他の非常事態が発生し、又は発生するおそれがあるときは、有線電気通信設備を設置した者に対し、災害の予防若しくは救援、交通、通信若しくは電力の供給の確保若しくは秩序の維持のために必要な通信を行い、又はこれらの通信を行うためその有線電気通信設備を他の者に使用させ、若しくはこれを他の有線電気通信設備に接続すべきことを命ずることができる。
 郵政大臣が前項の規定により有線電気通信設備を設置した者に通信を行い、又はその設備を他の者に使用させ、若しくは接続すべきことを命じたときは、国は、その通信又は接続に要した実費を弁償しなければならない。
 第一項の規定による処分については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができる。

(有線電気通信の秘密の保護)
第九条
 有線電気通信(電気通信事業法第四条第一項又は第九十条第二項の通信たるものを除く。)の秘密は、侵してはならない。

(異議申立ての手続における意見の聴取)
第十条
 郵政大臣は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定による郵政大臣の処分についての異議申立てに対する決定をしようとするときは、当該異議申立てをした者に対し、相当な期間を置いて予告した上、公開による意見の聴取を行わなければならない。
 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
 第一項の意見の聴取に際しては、当該異議申立てをした者に対し、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

(準用規定)
第十一条
 第五条第六条第七条第一項及び前条の規定は、有線電気通信設備以外の設備であつて、送信の場所と受信の場所との間の線条その他の導体を利用して、電磁的方式により、信号を行うための設備に準用する。この場合において、第六条第一項第七条第一項及び前条中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣(鉄道事業及び軌道事業の用に供する設備にあつては運輸大臣、政令で定める設備にあつては政令で定める行政機関)」と読み替えるものとする。

(国に対する適用)
第十二条
 この法律の規定は、第十条及び次条から第十八条までの規定を除き、国に適用があるものとする。この場合において、「許可」とあるには「承認」を読み替えるものとする。

(罰則)
第十三条
 有線電気通信設備を損壊し、これに物品を接触し、その他有線電気通信設備の機能に障害を与えて有線電気通信を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十四条
 第九条の規定に違反して有線電気通信の秘密を侵した者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
 有線電気通信の業務に従事する者が前項の行為をしたときは、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第十五条
 前二条の未遂罪は、罰する。

第十六条
 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
 第四条の規定に違反して有線電気通信設備を設置した者
 第七条第一項第十一条において準用する場合を含む。)又は第八条第一項の規定による命令に違反した者

第十七条
 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
 第三条第一項から第三項までの規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 第六条第一項第十一条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第十八条
 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。


附則

 この法律の施行期日は、別に法律で定める(昭和28年8月1日−昭和28年法律98)。


附則 (昭和59年12月25日 法律87) (抄)

(施行期日)
第一条
 この法律は、昭和六十年四月一日から施行する。(後略)

(有線電気通信法の一部改正に伴う経過措置)
第二十条
 この法律の施行に伴い、第五十条の規定による改正後の有線電気通信法第三条第二項の届出をなすべきこととなる者のうち、この法律の施行の際現に適法に有線電気通信設備を設置している者は、同項の届出をしたものとみなす。
 この法律の施行前にした第五十条の規定による改正前の有線電気通信法の規定に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(政令への委任)
第二十八条
 附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。


附則 (平成5年11月12日 法律89) (抄)

(施行期日)
第一条
 この法律は、行政手続法(平成五年法律第八十八号)の施行の日(平成6年10月1日)から施行する。

(聴聞に関する規定の整理に伴う経過措置)
第十四条
 この法律の施行前に法律の規定により行われた聴聞、聴問若しくは聴聞会(不利益処分に係るものを除く。)又はこれらのための手続は、この法律の施行による改正後の関係法律の相当規定により行われたものとみなす。

(政令への委任)
第十五条
 附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。


附属法令
有線電気通信法及び公衆電気通信法施行法
昭和28年7月31日 法律89
昭和28年8月1日 施行
有線電気通信法施行令
昭和28年7月31日 法令130
昭和28年8月1日 施行
有線電気通信法施行規則
昭和28年7月31日 郵政省令36
昭和28年8月1日 施行
有線電気通信設備令
昭和28年7月31日 法令131
昭和28年8月1日 施行

関係法令
有線放送電話に関する法律
昭和32年6月1日 法律152
昭和32年8月1日 施行
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定等に実施に伴う電気通信事業法等の特例に関する法律
昭和27年4月27日 法律107
昭和27年4月27日 施行
国際電気通信連合憲章
平成7年1月18日 条約2
平成7年1月18日 発効
国際電気通信連合条約
平成7年1月18日 条約3
平成7年1月18日 発効
国際電気通信連合憲章、国際電気通信連合条約及び業務規則に係る紛争の義務的解決に関する選択議定書
平成7年1月18日 条約4
平成7年1月18日 発効

入力者:河原一敏