母体保護法
(旧 優生保護法)
昭和23年7月13日 法律156号
昭和23年9月11日 施行
最終改正: 平成8年6月26日 法律第105号
入力者注:
- 第十四条第一項中、「姦淫」には「かんいん」と振り仮名が振られている。
- 第十五条第一項中、「そう入」(挿入)の「そう」には傍点が振られている。
- (この法律の目的)
- 第一条
- この法律は、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とする。
- (定義)
- 第二条
- 1
- この法律で不妊手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもつて定めるものをいう。
- 2
- この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を維持することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。
- 第三条
- 1
- 医師は、次の各号の一に該当する者に対して、本人の同意及び配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同等な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、不妊手術を行うことができる。ただし、未成年者については、この限りでない。
- 一
- 妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの
- 二
- 現に数人の子を有し、かつ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下するおそれのあるもの
- 2
- 前項各号に掲げる場合には、その配偶者についても同項の規定による不妊手術を行うことができる。
- 3
- 第一項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足りる。
- 第四条から第十三条まで
- 削除
- (医師の認定による人工妊娠中絶)
- 第十四条
- 1
- 都道府県の区域を単位として認定された社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
- 一
- 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
- 二
- 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
- 2
- 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。
- (受胎調整の実地指導)
- 第十五条
- 1
- 女子に対して厚生大臣が指定する避妊用の器具を使用する受胎調整の実地指導は、医師の外は、都道府県知事の指定を受けた者でなければ業として行つてはならない。但し、子宮膣内に避妊用の器具をそう入する行為は、医師でなければ業として行つてはならない。
- 2
- 前項の都道府県知事の指定を受けることができる者は、厚生大臣の定める基準に従って都道府県知事の認定する講習を終了した助産婦、保健婦又は看護婦とする。
- 3
- 前二項に定めるものの外、都道府県知事の指定又は認定に関して必要な事項は、政令でこれを定める。
第四章及び第五章 削除
- 第十六条から第二十四条まで
- 削除
第六章 届出、禁止その他
- (届出)
- 第二十五条
- 医師又は指定医師は、第三条第一項又は第十四条第一項の規定によつて不妊手術又は人工妊娠中絶を行つた場合は、その月中の手術の結果を取りまとめて翌月十日までに、理由を記して、都道府県知事に届け出なければならない。
- (通知)
- 第二十六条
- 不妊手術を受けた者は、婚姻しようとするときは、その相手方に対して、不妊手術を受けた旨を通知しなければならない。
- (秘密の保持)
- 第二十七条
- 不妊手術又は人工妊娠中絶の施行の事務に従事した者は、職務上知り得た人の秘密を、漏らしてはならない。その職を退いた後においても同様とする。
- (禁止)
- 第二十八条
- 何人も、この法律の規定による場合の外、故なく、生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行つてはならない。
- (第十五条第一項違反)
- 第二十九条
- 第十五条第一項の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。
- 第三十条及び第三十一条
- 削除
- (第二十五条違反)
- 第三十二条
- 第二十五条の規定に違反して、届け出をせず又は虚偽の届け出をした者は、これを十万円以下の罰金に処する。
- (第二十七条第一項違反)
- 第三十三条
- 第二十七条の規定に違反して、故なく、人の秘密を漏らした者は、これを六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
- (第二十八条違反)
- 第三十四条
- 第二十八条の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。そのために、人を死に至らしめたときは、三年以下の懲役に処する。
- (施行期日)
- 第三十五条
- この法律は、公布の日から起算して六十日を経過した日(昭和二十三年九月十一日)から、これを施行する。
- (関係法律の廃止)
- 第三十六条
- 国民優生法(昭和十五年法律第百七号)は、これを廃止する。
- (罰則規定の効力の存続)
- 第三十七条
- この法律施行前になした違反行為に対する罰則の適用については、前条の法律は、この法律施行後も、なおその効力を有する。
- (届出の特例)
- 第三十八条
- 第二十五条の規定は、昭和二十一年厚生省令第四十二号(死産の届出に関する規定)の規定による届出をした場合は、その範囲内で、これを適用しない。
- (受胎調整指導のために必要な医薬品)
- 第三十九条
- 1
- 第十五条第一項の規定により都道府県知事の指定を受けた者は、平成十二年七月三十一日までを限り、その実地指導を受ける者に対しては、受胎調節のために必要な医薬品で厚生大臣が指定するものに限り薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二十四条第一項の規定にかかわらず、販売することができる。
- 2
- 都道府県知事は、第十五条第一項の規定により都道府県知事の指定を受けた者が次の各号の一に該当したときは、同条同項の指定を取り消すことができる。
- 一
- 前項の規定により厚生大臣が指定する医薬品につき薬事法第二十四条第一項の規定の適用がある場合において、同条の規定による検定に合格しない該当医薬品を販売したとき
- 二
- 前項の規定により厚生大臣が指定する医薬品以外の医薬品を業として販売したとき
- 三
- 前各号の外、受胎調節の実地指導を受ける者以外の者に対して、医薬品を業として販売したとき
- 3
- 前条の規定による処分に係る行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条第一項の通知は、聴聞の日の一週間前までにしなければならない。
附則 (平成五年十一月十二日 法律第八十九号)(抄)
- 第一条
- この法律は行政手続法(平成五年法律第八十八号)施行の日(平成六年十月一日)から施行する。
- (罰則に関する経過措置)
- 第十三条
- この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
- (聴聞に関する規定の整理に伴う経過措置)
- 第十四条
- この法律の施行前に法律の規定により行われた聴聞、聴問若しくは聴聞会(不利益処分に係るものを除く。)又はこれらのための手続は、この法律による改正後の関係法律の相当規定により行われたものとみなす。
- (政令への委任)
- 第十五条
- 附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。
附則(平成六年七月一日 法律第八十四号)(抄)
- (施行期日)
- 第一条
- この法律は、公布の日から施行する。(後略)
- (その他の処分、申請に係る経過措置)
- 第十三条
- この法律(中略)の施行前に改正前のそれぞれの法律の規定によりされた許可などの処分その他の行為(以下この条において「処分等の行為」という。)又はこの法律の施行の際現に改正前のそれぞれの法律の規定によりされている許可等の申請その他の行為(以下この条において「申請等の行為」という。)に対するこの法律の施行の日以後における改正後のそれぞれの法律の適用については、(中略)改正後のそれぞれの法律の(これに基づく命令を含む。)の経過措置に関する規定に定めるものを除き、改正後のそれぞれの法律の相当規定によりされた処分等の行為又は申請等の行為とみなす。
- (罰則に関する経過措置)
- 第十四条
- この法律の施行前にした行為(中略)に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
- (その他の経過措置の政令への委任)
- 第十五条
- この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は政令で定める。
附則(平成八年六月二十六日 法律第百五号)(抄)
- (施行期日)
- 第一条
- この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日(平成八年九月二十六日)から施行する。
- (経過措置)
- 第二条
- この法律による改正前の優生保護法(以下「旧法」という。)第十条の規定により行われた優生手術に関する費用の支弁及び負担については、なお従前の例による。
- 第三条
- 旧法第三条第一項、第十条、第十三条第二項又は第十四条第一項の規定により行われた優生手術又は人工妊娠中絶に係る旧法第二十五条の届出については、なお従前の例による。
- 第四条
- 旧法第二十七条に規定する者の秘密を守る義務については、なお従前の例による。
- 第五条
- この法律の施行前にした行為及び前二条の規定により従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
入力者:河原一敏