外国人土地法

大正14(1925)年4月1日 法律第42号
大正15(1926)年11月10日 施行(大正15年 勅令第332号)

第一条
帝国臣民又ハ帝国法人ニ対シ土地ニ関スル権利ノ享有ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スル国ニ属スル外国人又ハ外国法人ニ対シテハ勅令ヲ以テ帝国ニ於ケル土地ニ関スル権利ノ享有ニ付同一若ハ類似ノ禁止ヲ為シ又ハ同一若ハ類似ノ条件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得

第二条
帝国法人又ハ外国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数カ前条ノ外国人又ハ外国法人ニ属スルモノニ対シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ外国人又ハ外国法人ト同一ノ国ニ属スルモノト見倣シ前条ノ規定ヲ適用ス
前項ノ資本ノ額又ハ議決権ノ数ノ計算ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル

第三条
外国ノ一部ニシテ土地ニ関シ特別ノ立法権ヲ有スルモノハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ国ト見倣ス

第四条
国防上必要ナル地区ニ於テハ勅令ヲ以テ外国人又ハ外国法人ノ土地ニ関スル権利ノ取得ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得
前項ノ地区ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス

第五条
帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上又ハ資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数カ外国人又ハ外国法人ニ属スルモノニ対シテハ前条ノ規定ヲ適用ス
前項ノ資本ノ額又ハ議決権ノ数ノ計算ニ付テハ第二条第二項ノ規定ヲ準用ス

第六条
土地ニ関スル権利ヲ有スル者カ本法ニ依リ其ノ権利ヲ享有スルコトヲ得サルニ至リタル場合ニ於テハ一年以内ニ之ヲ譲渡スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニヨル権利ノ譲渡ナカリシ場合ニ於テ其ノ権利ノ処分ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
前二項ノ規定ハ土地ニ関スル権利ヲ有スル者ノ相続人其ノ他ノ包括承継人カ本法ニ依リ其ノ権利ヲ取得スルコトヲ得サル場合ニ之ヲ準用ス但シ第一項ニ規定スル期間ハ之ヲ三年トス
第一項前項ニ規定スル期間ハ通シテ三年ヲ越ユルコトヲ得ス

附則(抄)

第七条
本法施行ノ期日ハ勅令(大正十五年 勅令第三百三十二号)ヲ以テ之ヲ定ム

第八条
本法施行ニ伴フ不動産登記法ニ関スル特例ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第九条
明治六年第十八号布告(地所質入書入規則)及明治四十三年法律第五十一号(外国人ノ土地所有権ニ関スル件)ハ之ヲ廃止ス


(現代語訳)

第一条
日本国民又は日本の法人に対し、土地に関する権利の享有を禁止し、又は条件や制限を附する国に属する外国人又は外国の法人に対しては、勅令によって、日本国内における土地に関する権利の享有について、同一若しくは類似の禁止をし、又は同一若しくは類似の条件や制限を附することができる。

第二条
日本の法人又は外国の法人であって、社員、株主もしくは業務を執行する役員の半数以上、又は資本の半額以上もしくは議決権の過半数が、前条の外国人又は外国の法人に属するものに対しては、勅令の定める所によりこれをその外国人又は外国の法人と同一の国に属するものとみなし、前条の規定を適用する。
前項の資本の額又は議決権の数の計算は勅令の定める所による。

第三条
外国の一部であって、土地に関し特別の立法権を有するものは、本法の適用についてはこれを国とみなす。

第四条
国防上必要な地区においては、勅令によって、外国人又は外国の法人の土地に関する権利の取得を禁止し、又は条件や制限を附することができる。
前項の地区は、勅令によって指定する。

第五条
帝国法人であって、社員、株主もしくは業務を執行する役員の半数以上、又は資本の半額以上もしくは議決権の過半数が外国人又は外国の法人に属するものに対しては、前条の規定を適用する。
前項の資本の額又は議決権の数の計算については、第二条第二項の規定を準用する。

第六条
土地に関する権利を有する者が、本法によりその権利を享有することができなくなった場合は、一年以内にこれを譲渡しなければならない。
前項の規定による権利の譲渡がなかった場合において、その権利の処分に関し必要な事項は、勅令によって定める。
前二項の規定は、土地に関する権利を有する者の相続人その他の包括承継人が、本法によりその権利を取得することができない場合に、これを準用する。ただし、第一項に規定する期間は三年とする。
第一項及び前項に規定する期間は、通して三年を越えることはできない。
附則(抄)

第七条
本法施行の期日は、勅令(大正十五年 勅令第三百三十二号)で定める。

第八条
本法施行に伴う不動産登記法に関する特例は、勅令で定める。

第九条
明治六年第十八号布告(地所質入書入規則)、及び明治四十三年法律第五十一号(外国人の土地所有権に関する件)は、これを廃止する。

入力者:河原一敏