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内田康夫FAN

56 天河伝説殺人事件

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浅見光彦 浅見雪江 浅見陽一郎 浅見秀一 江川道雄 川島孝司 川島なみ子 川島智春 川島隆夫 岸野 気賀沢 小西 吉川 鎌谷 鈴木 須佐千代栄 瀬田 斉藤 高崎義則 友井 竹宮雅志 田中 トシコ 長原敏子 野沢光子 広田 福本 広島 森本 吉田隆之 吉田須美子 三宅譲典 水上秀美 水上和春 水上和憲 水上和鷹 森川 水上菜津美 正木楠枝 吉田秀美       
奈良県吉野町  奈良県天川村  愛知県豊田市   
奈良県吉野を取材するルポライター、浅見光彦の目前で起こる事件の数々。それは能の家元、水上流宗家の継承者をめぐる血なまぐさい争いのようにも見えた。人間の栄枯を静かに見守る天河神社のご神体「五十鈴」だけがすべてを知っている。映画でお馴染みの本作に著者の最終的な校閲を得た、不滅のベストセラー、永久保存版。 (上記より引用)
「これまで天河には何度も来ているのに、どうして吉野に立ち寄らなかったのか」
 老人の呟きには、自嘲と無念の想いが込められていた。
「テンカワとはどこのことですか?」
 浅見は訊いた。
どういう字を書くのかさえ知らない。
「ん?」
 老人は浅見の存在など、まったく気にしていなかったように、またチラッとこっちを一瞥して、沈黙した。
 浅見も仕方なく、黙りこくった。気詰まりな時間が流れたが、不思議に、浅見は立ち去る気になれないでいた。老人に惹かれるというより、見放すことができない、一種の不安のようなものを、無意識のうちに感じているのかもしれない。
「この道をどこまでも行くと、天河に行くはずですよ」
 また、忘れたころになって、老人は言い、桜花壇とは反対方向を指差した。
「はあ、そうですか、近いのですか」
「ほっほ、近いといえば、近い」
 老人は力感のない笑い方をした。青年の無知を笑うようであり、自嘲のようでもあった。
天河伝説殺人事件 角川文庫より引用
【FAN データ】平均的評価=☆☆☆☆☆(最高=5)
[感想より]

北浦透さん

「伝説シリーズ」のなかで一番好きな作品です。こんな壮大なミステリーを書ける作家は内田康夫以外に知りません。だけど、そんな大作にもユーモアを盛り込むのがさらにすごいところ。浅見対警察の場面なんかは最高でした。


あつこさん

ものすごく読み応えのある作品でした。
いろいろな事件が錯綜してそれらがやがて一つの真実に結実していく様は、いつもながら内田さん妙技ですね。
三宅老が浅見光彦に、お父さんの思い出を語るシーンはつい泣けてしまいました。

ゆらりさん

お能の世界に五十鈴、天河神社、知らなかったことばかりです。それが、いつの間にかドラマばかりか、中森明菜が主題歌まで唄っちゃって、びっくりです。歌詞もいいですし。伝統につきものの跡継ぎ問題。女の情念も怖いものでした。
(2005 4月 作成)
【単行本】天河伝説殺人事件(角川春樹事務所)
【単行本】内田康夫ベストセレクション天河伝説殺人事件(角川書店)
【ノベルス】天河伝説殺人事件 (カドカワ・エンタテインメント)
【文庫本】天河伝説殺人事件(上) (角川文庫)
【コミック】天河伝説殺人事件 (YOUNG ROSE MYSTERY COLLECTION)
【DVD】天河伝説殺人事件 [DVD]
【関連】浅見光彦のミステリー紀行〈第3集〉殺人よりもアブナイ話 (光文社文庫)