村のきまり

ある小さな村でのおはなし。
最近になり、ひとりの男が村に住みついていました。
この男は、ガトゴトと音をたてるし、村のだれとも挨拶をしない
変わった人でした。
村長さんは、男が村の決まりを守ろうとしないので、どうにかし
なければ、と思い、村のみんなで話し合うことにしました。
そこで村民のひとりが「今度、村の決まりを守らなかったら、俺が
説教しにいってやる」と勇ましく言うので、皆は彼に任せることに
しました。
しばらくたって、例の男が決まりを守らないことがありました。さ
っそく、勇ましかった男が説教をしに行きました。村長さんたちは、
うまくいくかどうか心配でしたが、男の所から帰ってきた村民が笑って
「大丈夫だ。大丈夫だ。」というので、みんなは安心しました。
ところが、男は村の決まりを守りませんでした。どうしたものだろうと
思った村長さんは、若い村民を男のところに行かせました。力自慢の
若者です。男の所から帰ってきた若者が笑って「大丈夫だ。大丈夫だ。」
というので、みんなは安心しましたが、それでも男は決まりを守りませ
んでした。そのあとも村民を男のところへやるのですが、結果は一緒です。
たまらず、村長さんは自ら、男の家を訪ねました。男は腕力もなさそうな
やせた若者でした。村の決まりの話をしようとしたところ、男は「となり
村からいい商売の話をもらってるんだけれど、一緒にやらないかい?」
と聞いてきました。村長さんは(ハハア、みんなはこの話にのっかったんダ
ナア)と思い、説教だけして帰りました。
村の集会は度々あるのですが、日に日に参加者は少なくなってきました。
村長さんは村民の一人一人に「どうしたんだい」とたずねて歩きました。
多くの村民が「商売が忙しくて」と返事をしました。そして、その後に
きまって「村長さんが村のこときめてってくれや」と言いました。
村長さんは(仕方あるまい。参加できる者だけでやっていこう)と思い、
少人数の集会を度々開きました。少なくなっていく参加者に村長さんは
腹が立つ気持ちがあったので、村の決まりをどんどん厳しくしていきま
した。多くの村民は商売がうまくいってるのか「仕方ねえ、仕方ねえ」と
村長さんの決めたことを守りました。
しかし、日がたつにつれて、商売のうまくいかなくなる者が増えてきて、
ついには、例の男がどこかへ逃げていってしまいました。そうなってくると
いままで「仕方ねえ、仕方ねえ」と言ってきた村長さんの厳しい決まりが
トンデモない決まりに思えてきました。そこで、商売のうまくいかなくな
った村民たちは話し合って、村長さんを辞めさせてしまいました。村長さ
んは「私の心が欲に負けてしまった。皆にすまないことをした」と反省し
て、村の奥に引っ越していきました。
村民たちは村の決まりもすべてなくして、自由となりました。そこで、とり
あえず新しい村長を決めようじゃないかと相談したのですが、なかなか決ま
らないので、1年ごとの交代にしました。
1年たって、交代の時期がきました。
ところが、次の村長になるはずだった村民が「オラ、やりたくねえ」と、村
長の仕事を逃げてしまいました。困った村民たちは「決められたことを守れね
えヤツは罰金だ」と、新しい決まりをつくりました。
自由のはずの村でしたが「音がうるさい」「借金をなかなか払わない」
「人ン家のモノ勝手にもっていく」などなど、トラブルが絶えません。困った
村民たちは「しっかりしてねえヤツは罰金だ」と、新しい決まりを次々とつく
っていきました。なにかあるたびに決まりは増えていきました。
ある村民はボヤきました。「前の村長さんのときより厳しくなったなア」

おわり


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